サービスマネジメント

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サービスマネジメントとは、”サービスの特徴”に焦点を当てた持続的な成長を支える仕組みづくりや、経営現場で直面する課題解決のための理論・フレームワークです。

サービスの特徴である「無形性」、「同時性」、「消滅性」、「変動制」を前提に、サービス業における経営指標の因果関係をモデル化した「サービスプロフィットチェーン」と、それに基づくサービスマーケティング・人材マネジメント・オペレーションマネジメントについて紹介します。

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近年、レジャー、運輸、小売、製品メンテナンスといった典型的な”サービス”のみならず、自動車・電機といった製造業でもサービス機能強化が顕著になってきております。これは日本に限った話ではなく経済が成熟する国で見られる共通の傾向であり、サービスマネジメントの考え方は重要性を増すばかりです。

ますます比重が置かれるようになったサービスに関して、その特徴を考慮した経営理論をサービスマネジメントと呼んでいます。

ちなみに、よく似た言葉に「ITサービス・マネジメント」がありますが、「サービスマネジメント」とは異なります。ITサービスマネジメントとは、ビジネス部門が必要とするITサービスの安定的な提供とITサービスの継続的な改善を管理するための仕組みです。企業におけるIT部門が、従来のシステム開発・構築・運用という役割を超え、ITの立場からビジネスを理解し、ビジネスの発展に貢献するための取り組みや管理手法を取ります。

サービスの特徴と経営への影響

サービスの特徴である「無形性」・「消滅性」・「同時性」・「変動性」です。それぞれ次のように定義されます。

①「無形性」製品と違い、見ることも触ることもできない事を指します。例えば、従業員と顧客とのコミュニケーション、サービスを提供・教授するタイミング・スピードなどは見たり触ったりできないものですが、顧客満足度に影響する重要なポイントになります。

②「消滅性」提供と同時にその場で経験・消費され、蓄えておくことができないことを指します。製品と違い、サービスは形として残らないことが特徴です。

③「同時性」サービス提供者と消費者が同じタイミングに同じ場所に居合わせる必要があることを指します。顧客との接点を増やすため、拠点や店舗を増やしたり、顧客接点に立つ人材の質を高めることが求められます。

④「変動性」誰が、いつ、どこで、誰に対して提供するかでサービスの内容が変わることを指します。新人とベテランでサービス品質に差があることがありますが、品質のブレを解消するためには「標準化」や「品質を担保する仕組みづくり」が重要になります。

サービス経営で重要なバラつきのマネジメント

こうしたサービスの特徴と深く関連するものは、「人の関与」です。
サービスが提供される現場は、多様なニーズを持つ顧客と、良い意味でも悪い意味でも均等なスキルを持たない従業員がいる店舗や事業所になります。本部が画一にサービス品質を決めることはできず、それぞれの現場でサービス品質が変動せざるを得ません。

ここで重要になるのが、「バラつき」という概念です。

上述の通り「変動性」や「無形性」を伴うサービスは、決まった規格の製品を生み出す製造業と異なり、その品質にばらつきが生じやすくなります。
その品質のバラつきの原因はサービスを提供している「人」にあります。同じブランドで立地や客層が似ているエリアの飲食店でも店長次第で売上のバラつきが数%違ったり、同じアパレル商品を売っていても、接客スタッフによって売上に大きく差が出ることが、代表例です。

こうしたバラつきをマネジメントすることはサービス経営のなかでも大きなイシューになるのです。

サービス業における経営指標の因果関係を示す「サービスプロフィットチェーン」モデル

こうしたサービス固有の特性を前提にした代表的な経営理論のひとつに「サービス・プロフィット・チェーン」があります。サービスプロフィットチェーンとは、サービスにおける様々な経営指標の因果関係を示したモデルです。具体的には次のようなステップを取ります。

①社内サービスの質が従業委満足度に影響を与える
②従業員満足が、従業員ロイヤリティを生みます
③高い従業員ロイヤリティが生産性を高めます
④高い生産性がサービス価値を高める。
⑤高いサービス価値が、高い顧客満足度を生む
⑥高い顧客満足度が、顧客ロイヤリティを生む
⑦高い顧客ロイヤリティが企業の業績向上に繋がります。

こうしたモデルを活用することで、サービス組織の改善のヒントを得ることができます。

従業員満足度と顧客満足度のサティスファクション・ミラー

この理論のベースになっているのがサティスファクション・ミラー (ハーバード・ビジネススクールのジェームズ・L・ヘスケット教授らが提唱)です。サービス業において、顧客満足と強い相関があると言われているのが従業員満足です。

従業員が提供するサービスによって顧客が満足し、従業員に感謝を伝えると、その従業員は自分の仕事に誇りと愛着を持つようになることでモチベーションが高まり、
さらに良いサービスを顧客のために創意工夫するようになります。そして、より高品質なサービスを受けた顧客はさらに満足し、ロイヤルティを高めてリピーターになり、それがさらに従業員の満足度を向上させていく。

このように顧客満足と従業員満足が相互に影響を与え合う、良循環の関係にあることを指す理論です。

顧客ロイヤリティが業績向上へと繋がるポイント

そして顧客満足度が高まれば顧客ロイヤリティに繋がり、業績向上に繋がります。

顧客ロイヤリティとは、「このブランドを購入したり、利用し続けたい」という顧客の意向の度合いのことです。顧客ロイヤリティの高さは企業の収益性に好影響を与えます。

多くの企業が顧客満足度を高める施策に取り組んでいますが、大きく類型化すると次のようなポイントがあります。

・本質的なサービスに力を入れること
顧客が受けるサービスには、本質的なサービス表層サービスに分けることができます。本質的なサービスとは顧客が代価を支払う際に「受け取ると期待しているもの」を指し、一方で、表層サービスとは、顧客が支払う代価に対して「当然とは思わないもののあると喜ばしいもの」を指します。
顧客満足度を高めるにはすべてのサービスに力を入れる必要があると思いがちですが、むしろ自社の本質的サービスを見極めること、そして表層サービスのうちトータルの顧客満足度に貢献するものに集中して力を入れることが重要です。

・サービスを可視化する:
サービスは目に見えていないため、顧客自信がサービスを受けていることさえ忘れてしまうことがあります。目に見えないサービスを可視化する取り組みを通して、サービスを受けている認識を顧客に持ち続けてもらうことが重要です。

・認知作用を用いる:
一連のサービスのなかでも、特に「エンディング」など顧客に印象深いシーンに抽出し、特に力を入れることで顧客満足度全体を高めることができます。

サービス業におけるマーケティング・人材マネジメント・オペレーションのポイント

サービスの特徴、サービスプロフィットチェーンを前提としたときに、サービスの特徴に合わせたマーケティング・人材マネジメント・オペレーションに取り組むことで、サービス経営を効果的に進めることができると言われています。

①サービスマーケティングの特徴

目に見えないサービスを顧客に選んでもらうには、通常のマーケティングに加えてサービスマーケティングならではのポイントがあります。
そもそも「サービス」とは、目に見えないという特徴の他にも、「実際に経験してみないとわからない」、「時間が経過して初めて価値が判断できる」といった特徴があります。
こうした特徴を持っているため、サービスマーケティングでは次のようなポイントが重要です。

・人的要素:サービスを利用している顧客を前面に出すことでサービスの価値を伝えやすくなる。また、実在の従業員の紹介や採用・教育を工夫している点で品質をアピールすることができます。
・物的証拠:顧客の視覚やそのほかの感覚で感知でき、サービス品質に関する手がかりを物理的にちりばめめることで品質を高められます。例えば施設や備品などのクオリティが挙げられます。
・プロセス:サービス提供のプロセスやノウハウなどを事前に示すことで、自陣が受けるサービスを事前評価できます。

②人材マネジメントの特徴

人材マネジメントは従業員満足度を高めるうえで非常に重要です。人材マネジメントは、採用・育成・配置・評価・報酬と分けて考えることができますが、次のようなポイントが考えられるでしょう。
採用: 入念な採用と選抜のなかで、価値観や性格を重視すること
育成: 教育・研修のみならす、企業理念の浸透や、、個々人のスキル可視化する工夫を取り入れ、ボトムアップでの創意工夫を促す。
配置: マニュアルやルールによってサービス品質を担保しつつしながらも、創意工夫や現場の裁量を認め、個々のスタッフの強みを最大化する。また強みに応じたキャリアを用意する。
評価: 定量的な結果指標による評価だけでなく、そのサービスの目的(理念)にかなう行動を評価・称賛する。
報酬: 金銭的報酬のみならす、非金銭的報酬として、周囲の仲間からの感謝・称賛、ワークライフバランス、自己成長・能力開発の機会付与、労働環境の整備等)も含めたトータル・リワードという考え方で報いる。

③オペレーションマネジメントの特徴

オペレーションマネジメントで考えるべきは労働生産性です。労働生産性とは、単位労働量当たりに生み出される付加価値額のことを指します。

労働生産性は 「付加価値 / 労働投入量」で表現できますが、付加価値を増やし、労働投入量を減らすことで、労働生産性を高めることができます。

・労働投入量を減らす:本質的サービスではない表層サービスのなかから顧客満足度に繋がらない要素への取り組みをやめる無駄どり、業務効率向上やスピードアップ、ITや機械化による労働力の代替などが挙げられます、

・付加価値を増やす:サービス価格を上げたり、利用サービス数を増やす、利用顧客数を増やすなどして付加価値を増やすことができます。

以上、サービスマネジメントの概要として、サービスの特徴、サービスプロフィットチェーン、サービス経営におけるマーケティング・人材マネジメント・オペレーションについてご紹介させて頂きました。

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