どこの企業でも、社員の早期退職やアルバイトスタッフがすぐに辞めてしまうことは避けたいもの。ゆとり世代とさとり世代が、新人や若手である今の時代は、いかに定着率を上げるかが重要になってきています。
採用した社員やアルバイトスタッフがやめる理由はどこにあるのでしょうか?近年様々な「研修」を行う企業が増えてきていますが、今回は「教育」に注目していきます。
教育とはなにか。具体的な教育方法は何があり、どんなものを取り入れたら良いのか。これから詳しく解説していきます。
よく間違えられる「研修」と「教育」の違いとは?
同じ意味に捉えられがちな「研修」と「教育」ですが、実は、似ているようで違う意味を持つ言葉なのです。
研修 ・・・ もとは、知識や技能などの習得を意味します。ビジネスでは、職務や業務に必要な知識や能力を習得するための場を指します。例えば、講習会や勉強会などです。
教育 ・・・ 知識の増加や技能を身に着けさせるだけでなく、個人の能力を引き出そう、教えて育てることを教育と言います。例えば、面談やOJT、資格取得支援などです。
研修は、教育の実施形式の一つであるため、それぞれは同じ意味ではありません。
社員教育を行うことで生まれるメリットとは?
社員教育を行うことで企業側にどのようなメリットがあるのでしょうか?企業の抱えている問題や、置かれている状況によってそれぞれ必要性は変わって来ますが、一般的なものとしては以下の3つのメリットが挙げられます。
- 周囲の信頼を得ることに繋がる・・・企業陣として、企業の規律や社会人としての常識、ビジネスマナーなどといった基礎知識を最初に習得しなければなりません。新入社員のために行われる新人教育などが例に挙げられます。
社会人としての教育を受けることにより、組織の中だけでなく取引先でも問題なく対応することができ、企業全体に良い印象を与えることになります。自社の中だけでなく、周囲との信頼も獲得することができるメリットがあります。 - 会社の将来に繋がる・・・企業理念や方針を社員教育により浸透させることで、企業のために行動する社員を育成することができます。一つ一つ業務の意味を理解することにより、社員は積極的に取り組むようになるため、業務の目的だけでなく、存在意義を共有しておくことが大切です。企業理念や方針を理解している社員が増えてくるということは、経営戦略や事業の方向性を考える場を設けたりする、会社の将来を考える社員を育成することに繋がるのです。
- 生産性の向上に繋がる・・・個人の能力を上げるスキル研修などを行うことによって、会社の生産性の向上に繋がります。全体的な研修ではなく、個々の能力に合わせた教育が必要なので社内環境を整えることと、業務の「仕組み化」が必要になってきます。例えば、OJTや日々の業務を評価し、不足しているスキルに関してフィードバックを行うと行った仕組みなどです。
企業は、トップだけで成り立っているわけではありません。企業全体の生産性の向上と業績アップを図るためには、いち早く多くの優秀な社員を育成することに限るのです。
アルバイト教育を行うことにメリットはあるのか?
社員よりも軽視されがちなアルバイトスタッフは、本当に教育を行うメリットはあるのでしょうか?アルバイトスタッフを多く雇う必要があるコンビニやスーパーなど接客がメインの企業では、現在、採用したアルバイトスタッフがすぐ辞めてしまうことが大きな問題となっています。その原因の一つとして、「教育」の制度がしっかりとしていないことが挙げられます。また、教育制度があっても教える社員が適当であったりするところが多く、そのことが原因で辞めてしまうアルバイトも少ないのが現状です。現に、有名チェーン店で「きちんと教えてくれなかったから」という理由で辞めてしまったアルバイトスタッフもいます。「定着率アップ」はどの企業でも課題になっているところなのです。
アルバイトスタッフが定着しなければ、それだけ採用や新人研修にコストがかかり、サービスのクオリティも下がるため、売上が下がってしまいます。反対に定着率がアップするということは、真逆の効果があるため売上が上がるメリットがあるのです。
軽視されがちなアルバイトスタッフですが、定着しないことにより売上にまで影響してくるぐらい、大切な存在なのです。
社員教育の具体的な手法を紹介
社員教育には様々な手法がありますが、その中でも代表的なものを3つ紹介していきます。
- OJT(On the Job Training)・・・上司や先輩から直接指導を受けながら、実務を通して学んでいく教育方法です。一般的には簡単な業務からスタートし、徐々に難易度をあげていき、それぞれの業務を通して知識や経験を身につけていきます。個人に合わせた教育ができるのは良い点なのですが、現場や教える立場の人間によって計画が異なることがあり、社員の育成に差が生じてしまう可能性もあります。適切なOJTは、座学と実践の区分けをしっかり行うことと、社内に共通した計画性を立てた上で行うことが大切です。
- 研修・・・求めるスキルや職位別によって受けられる研修や、受ける必要がある研修が変わってきます。内部、外部問わず研修を受講しやすい環境を作ることが何よりも大切です。「研修」は「セミナー」と違いほぼ強制的に参加する必要があります。それぞれの目的やスキルに合った社員が全員参加できますが、会社としての目的や目標をしっかりと定めておかないと、コストや時間がかかるだけになってしまうため注意が必要です。
- e-ラーニング・・・スマートフォンやネット環境が整っていればいつでもどこからでも受講可能な、インターネットを使用した学習方法です。個人の仕事や環境に合わせて好きな場面で勉強することができるのが最大のメリットですが、参加者のリアクションが把握できないため理解度が把握することが難しい手法です。
理解度を図るためのテストや、学習期間を定めるなどの対策を行えば効果的な学習方法といえるでしょう。
アルバイト教育の具体的な手法を紹介
アルバイトスタッフにも、社員と同じように「新人研修」と呼ばれるものがありますが、企業が主催しているビジネスマナーを講師が教えるようなしっかりしたものではありません。少しの知識を与え、後はOJTで学ぶといった形式がほとんどなようです。
しかし、このままの手法ではアルバイトスタッフの定着には繋がりません。新人のアルバイトスタッフをいかに教育していくかが、定着率に大きな影響を与えることになるので、具体的な方法を紹介します。
- 仕事を教える前に、居場所を与える・・・初日は、新人スタッフにとって職場の第一印象が決まる大切な日です。全員参加の歓迎パーティーなどを開催し、「自分の居場所」を作ってあげることで職場への愛着が生まれます。モチベーションも向上するので、教育を受ける際には熱心に取り組むようにもなるので、教える側にも教わる側にも良い環境が整います。
- 足並みをそろえる・・・スタッフ一丸となって足並みをそろえていくことが、お店の売上向上に繋がります。そのためには、経営者が新人スタッフに思いを伝えることが大切です。売り場や、お客様のいる場所ではなく、事務所やカフェなど静かな環境で「経営者や店長の思い」「ビジョン」「どのような従業員であってほしいか」などを伝える時間を設けたほうが良いでしょう。
- 100%教える・・・わからないことがでてくるたびに聞かなければいけない教育方法では、中途半端です。安心して任せられる人材に育成しなければ、ミスをした時に注意しなければならず、その度に本人のモチベーションは下がっていってしまします。仕事は、「100%教える」ことが大切なのです。100%の教育をするためには、「チェックシート」を作成するのが良いとされています。作り方は、それぞれの作業を分解して箇条書きにし、リスト化するだけなので簡単です。ドラッグストアやコンビニのトイレなどにある、掃除チエックリストが良い例です。チェックリストにより、全員が見ることができるので教え漏れも防ぐことができます。
- 自分用マニュアルを作らせる
・・・スタッフには、自分専用のマニュアルを作ってもらいます。マニュアルと言われると難しく思われてしますかもしれませんが、教わったことや覚えたことをノートに書いていくだけです。これが積み重なることで自分専用のマニュアルになるのです。
新人スタッフが成長して一人前になれたとしても、定期的に実技チェックを行うことが大切です。また、新人だけでなくベテランスタッフも抜き打ちテストを行うことで、スタッフ全体のモチベーションアップにも繋がります。
ディズニーキャストが全てのお手本
働いているスタッフの9割がアルバイトだというディズニーリゾート。わずか3日という短い研修期間で一人前のディズニーキャストを育てる独自の教育方法は、他の企業からも注目されています。
最も有名な話なのが、ディズニー流の「OJT」です。どの企業でも取り入れているものなのでは?と思われがちですが、キャスト本来の役割を理解するために行われるOJTはひと味違います。
ある、キャストの新人時代のお話です。開演前に東京ディズニーランドに入り、シンデレラ城が見えてくるところに現れるウォルト・ディズニーとミッキーマウスの像(パートナーズ像)の目の前に「15分間立っている」のが、初日のOJTでした。開演後も何も話をせず、ただ入ってくるゲストを見つめ続けて15分後、隣に立っていたトレーナーから「何を感じましたか?」と聞かれたそうです。その新人キャストが「この笑顔に応えたいと思いました」と答えたところ、「それがあなたの仕事です」とトレーナーは微笑みました。
永遠と「お客様の大切さ」を先輩や上司から教えられるのと、実際に笑顔で入園してくるお客様の顔を15分見せるのとでは、その後の行動や思考がまったく変わってきます。
他にも、マニュアルを暗記させなかったり、リーダーのコミュニケーションに工夫がなされていることで、キャスト一人ひとりが自ら考える力が身に付き、どんな場面に遭遇しても柔軟に対応できるキャストを育成することができているのです。
まとめ
社員もアルバイトも正しい教育をすることで、企業やお店の利益に必ず繋がります。教育には様々な手法がありますが、なぜ教育をするのか?教育することで、どうなってほしいのかなどの目的や目標を明確にしてから、どのような教育をしていくべきか考えていくことが大切です。
いつの時代でも、どんな職場でも、「人」がいなければ仕事はつくることができません。組織や企業の成長の要である「人の育て方」。迷った時には、ディズニーキャストをお手本にすることで道が開けることでしょう。