せっかくパートの従業員を採用したのに研修期間に辞めてしまった、ということはありませんか?こちらの記事ではパート従業員が辞める理由と、効果的な研修法、そしてパート研修の成功事例を紹介します。この記事を読めば、従業員の定着率アップのために必要なステップが理解できるので、ぜひ参考にしてください。
研修とは
研修とは、パートや正社員など新入社員が業務を実施するために必要な知識やスキルを習得するための講座のことです。しかし、業務を遂行するためには知識やスキルだけが重要なのではありません。その会社の理念や行動指針、どのようなことを大切に日々働いているかについても理解してもらう必要があります。そのため、研修を実施する担当者は研修の目的を明らかにした上で行うことが大切です。研修の目的は、研修生・顧客・企業それぞれあります。
・研修生:技術やスキルを身に着ける
・顧客:より質の良いサービスや商品提供を受けて満足度アップ
・企業:業績アップ
研修を企画するときは、研修がこの3つの目的を達成するように構成します。
研修の方法は、
・OJT (On the Job Training):職場内訓練
・OFFJT (OFF the Job Training) :職場外訓練
大きく分けてこの2種類存在します。まずOJTは、現場で上司や先輩に直接指導してもらいながら、担当業務を実践で覚える方法です。OFFJTは、職場の外で研修会に参加する方法で、集合研修がOFFJTに含まれます。
パートで勤務する場合、通常はOJTとして職場でベテランスタッフに指導してもらいながら研修を行うケースが多く見られます。
研修後パートがすぐ辞める理由
ある求人サイトの調査によると、入社して1か月でパートやアルバイトを辞めた経験のある人は半数に及ぶことがわかりました。大体の職場が入社してから1~3ヶ月を研修期間としているので、研修期間中または研修直後に半数の人が辞めていることになります。その退職理由として、以下のような声が挙げられています。
・人手不足の職場で、ろくに教えてもらいもせず接客をさせられて、ミスをして怒られた。(20代男性)
・残業が多いのに残業代がつかないことがわかったので。(50代女性)
・女性の多い職場で、人間関係が面倒くさかったから。(40代女性)
・当初想定していたより外部のお客さんと話すことが多く、できないと思った。(30代女性)
・求人票に記載されていた仕事内容とまったく違った。(30代男性)
当初聞かされていた条件と違った業務内容を強いられたり、人間関係が合わなかったり研修が不十分であったりすることが早期退職の原因になっています。
パート研修の重要性
パートは正社員と違い経営方針など重要事項について決定する立場にないからといって、研修を怠ってはいけません。なぜなら、顧客にとっては店員がパートかどうかは関係ないからです。パートが多く採用される飲食店やアパレル、小売業ではパートが店頭に立って直接お客様に接客をします。指導不足によって顧客が従業員から不当な扱いを受ければ、クレームとなり企業のイメージダウンにつながります。それがインターネットに口コミとして書かれれば、社会的評価を落としてしまうことになります。
また、現在日本は人材不足が顕著になっており、特にパート起用の多い飲食業界で問題となっています。さらに、飲食業界は人の入れ替わりが激しくパートの定着率が悪いという点も懸念されます。
そこでパートの定着率を上げるためにも教育体制を整えて、顧客の満足度アップにつながる接客ができるよう適切な研修を提供するべきです。すると従業員のモチベーションが上がり、提供サービスの質やパート定着率が向上していきます。充実した研修の提供は、企業にとって必要な投資なのです。
パート人材定着のための効果的な研修法
ではパート人材が定着するために効果的な研修法を紹介します。
①事前準備
②受け入れ初日
③入社から1週間
この3つの期間別に具体的な内容を確認していきましょう。
①事前準備とは、パートとして従業員が入社してくることが決まったら勤務開始日までにすることです。その内容は以下のとおりです。
・マニュアル整備
・環境整備
・指導担当者を決める
まずマニュアルを作成・整備することから始めてください。パートの研修は現場でのOJT研修で業務を覚えるケースが多く見られますが、指導者によって質のバラつきや相性があります。そのため、情報均一化のためにも空き時間を利用して1人でも学習できるようマニュアルを用意することが大切です。マニュアルには文章だけでなく、図や写真、動画を利用すれば理解度がアップします。さらに、マニュアルにチェック項目や問題形式を用いれば、研修後指導者が理解度を確認することができます。そうやってフォローアップ体制を作ることも、研修生のモチベーションアップにつながります。
そして、環境整備も大事なポイントです。この場合の環境とは、休憩所や制服を着替える場所などバックヤードを意味します。新しく入ってきた人は緊張していることが多いので、安心して快適に休憩できる場所があるかどうかも大切です。掃除や整理整頓をして、清潔な環境で迎えてあげられる準備をしてください。
もうひとつ重要な点として、指導担当者を決めることがあります。新しくパートで入ってきた人が放置されないように、指導担当者と指導内容や時間をしっかりと確認してください。ここが曖昧になってしまうと、当日何をしていいかわからず新入社員を不安にさせてしまい、早期離職につながってしまいます。
次に、②受け容れ初日について説明します。当日は、なるべく上司が新しい人を紹介するようにしてください。担当部署の全員の前で上司によって紹介されると、新しく入る人は「大切に迎えられている」という印象を受けます。そして、前日に全員に新しく入社する人について周知しておくことで、歓迎ムードで迎え入れることができます。
紹介が終わったら、いきなり業務に入るのではなくまず職場の建物の中を案内しましょう。入り口と出口、トイレや食堂や休憩場所、ロッカーの案内など出勤してから退勤するまでの導線をまず教えてあげてください。また、子供がいるパートの主婦の場合は幼稚園や学校から日中に連絡が来ることもあるので、携帯電話の使用場所も事前に伝えるようにしてください。そして、契約書など必要書類を記入する時間を作りましょう。その際ガイダンスとして会社の理念や方針の説明をして、社内の雰囲気を事前に教えてあげると安心感を与えます。誰でも初日は不安になるので、暖かく迎えてあげることを念頭に置いて研修を始めましょう。
③の勤務開始から1週間にかけては、小さな成功体験ができるようパート研修を企画してください。もしそれが接客業なら、実際に現場に立って簡単な対応から始めて「できた」と思えるような機会を提供してください。お客様から「ありがとう」と言われればやる気もアップします。指導者は、フィードバックと評価をしつつコミュニケーションをしっかり取って成長を支えてください。
ここまでは現場でできることですが、次に管理職の立場でできることを説明します。それは、評価システムの改善です。新しく入ったパートがすぐに辞めてしまう原因の1つとして、人間関係が挙げられます。これは特に、ベテラン社員との関係が大きく影響を及ぼします。例えば小売店の場合、店長は本社から派遣され数年で交代していきます。そのため、その地域に根づいて長く働くベテラン社員は店長よりも店舗についてよく知っているため、教育係を任されることになります。このベテラン社員が教育者として質が低ければ、せっかく入ったパートの従業員もすぐに辞めることになってしまいます。そのため会社は従業員に対して、どれくらい仕事ができて知識があるかだけでなく、教育者としてどれくらい優れているか、という点も評価基準として設ける必要があります。
パート研修に成功した企業事例
パート研修に成功した企業の事例を3件ご紹介します。
・(株)吉野家
牛丼を中心としたチェーン店である吉野家の従業員数は約21,000名。そのうちパート労働者は19,700名で、店舗運営の多くを担っています。スピードを重要視する吉野家では企業方針に合った従業員を育成する必要があるため、ランクアップシステムを新たに採用。ランクは9つに分けられ、ランク上位のパートが下のパートを教育できる制度で、時給もこのランク付けに応じて決められています。その結果、スキル習得がスムーズになり定着率が上がっていきました。また、ランク別のOFFJTのミーティングもモチベーションアップにつながり、定着率向上に貢献しています。
・株式会社AOKI
紳士服や婦人服を販売するAOKIの従業員数は5,760名で、そのうちパート従業員は2,980名。その7割が扶養内で働く主婦で店頭での接客や販売を担当しています。パート従業員も正社員と同様のパフォーマンスを発揮してもらうために、エリア社員と同じ基本給を支給。そして行動・業績評価を加味し昇給額に毎年反映するほか、年に3回ボーナスが支給されています。さまざまな表彰制度にも参加することでモチベーションを維持し、やりがいを持って継続して働けるよう環境づくりをしています。その結果、パート従業員の平均勤続年数は11年(2015年時点)となっています。
・株式会社 北都銀行
秋田県を中心に展開する金融機関である北都銀行の従業員数は1,513名で、そのうちパート労働者は329名。パート労働者にも正社員と同様に「どんなキャリアを積んでいきたいか」自主的に考えてもらい、1人1人と面談をすることでモチベーションアップを図っています。さらに、業務可能範囲や自己啓発など28項目について自己評価を実施することで、スキルチェックやスキル認定を実施。そのほかコンサルティングや収益の貢献度などさまざまな点で評価されれば、正社員と隔たりなく頭取により表彰されます。その結果、2016年度の離職率が9.6%となり前年と比べ2.26%減少しました。
社名 | 業種 | パート研修の特徴 |
株式会社 吉野家ホールディングス | 飲食 | ・ランクアップシステムを採用 ・上のランクが下のランクの従業員を教育 ・ランクによって時給が決定 ・エリア内でランク別のミーティング開催 |
株式会社AOKI | 小売 | ・社員とパートが同じ基本給 ・実績が毎年の昇給に反映 ・年に3回のボーナス |
株式会社 北都銀行 | 金融 | ・キャリアプランを自分で作成 ・人事と面談 ・自己評価制度の導入 ・評価が高ければ頭取により表彰 |
パート研修には動画教育がおすすめ
パート研修に動画研修を導入することで、研修時間を短縮することができます。飲食業界の中では異例の離職率の低さを持つスターバックスは、パートも正社員も80時間の研修時間を設けていました。しかし現在は、動画研修を取り入れることで半分の40時間にすることができました。そのため、動画をパート研修に用いることで研修効率を飛躍的にアップさせることができます。
そこで株式会社ClipLineの動画を活用した研修システムが、パート研修におすすめです。例えば外食チェーン店で必要な現場の業務を撮影し、研修動画として配信すれば質の高いサービスを安定して提供できるようになります。ある企業でClipLineを導入していない店舗と導入店舗の離職率を比較したところ、導入していない店舗が36%、導入した店舗が10%以下となりました。動画研修も定着率アップにつながるので、ぜひ取り入れていてはいかがでしょうか。
まとめ
パートの従業員は研修後なぜ辞めるのかその原因、パート研修の必要性や成功例、そして動画研修について説明しました。パート研修を充実させることで定着率は確実に上がり、それは結果的に企業の業績に貢献することになります。ぜひ御社でも、もう一度パート研修について検討し直してみてはいかがでしょうか。